五月の風

夜の窓を少しだけ開けると、湿り気を帯びた風がカーテンを静かに揺らしました。

春の終わりと夏の入口が薄い空気の層の中で混ざり合っていました。

 

 

アリスガワ「5月の風って不思議です。春みたいに柔らかいのにどこか終わりの匂いもする気がします」

神宮司「完成された夏よりまだ夏になりきれていない今の方が想像の余白があるように感じます。季節は変わる瞬間がいちばん美しいのかもしれませんね」

アリスガワ「余白。ですか」

神宮司「ええ。人は完成されたものより変わっている途中に惹かれることがあります」

アリスガワ「フフフ、だから5月って少し落ち着かないんですね」

神宮司「揺れているものを見ると人は自分を重ねやすいのです」

 

 

遠くでまだ若い葉っぱが風に擦れる音がしました。