午後の弱い光が読みかけの本の上に静かに落ちていました。
アリスガワ「今日は特に何もない日でしたね」
神宮司「ええ、ですが。いい一日ですね」
アリスガワ「何も起きていないのにですか」
神宮司「何も壊れずに。誰も傷つかずに。静かに終わっていく日は、案外貴重なんです」
アリスガワ「昔は特別な日ばかり求めていました」
神宮司「若い頃は強い光こそ人生だと思いやすいですから」
アリスガワ「でも、本当は普通の日の方が長いんですね」
神宮司「ええ。そして人生はその長い普通でできています」
ページをめくる音が、いつもより一層と穏やかに聞こえました。
